POST LIVING ROOM
〈ポスト・リビングルーム〉は、アートと建築/インテリアの境界を柔軟に行き来する、ユニークなグループ展です。
本展の出品作家で唯一の建築家元木大輔は、建設現場で見かけるあの4 4無骨な単管パイプに18 金のメッキを施すことで、その秘められた機能美を見事に引き出しています。一方、オルタナティブ骨董を扱う亀田克佳は、廃材や古道具の断片による見立てと、アッサンブラージュを制作しています。その佇まいはまるで、時空を超え稲垣足穂の世界を彷彿させるかのようです。家具や道具などの持つ機能をいったん宙吊りにして、オブジェクトを「魔法のブラックボックス」に入れてみる――言わば巧みな脱構築によって――物質を超えたイメージへと昇華させる。これらは、その好例ではないでしょうか。
そしてもうひとつ(ヒカリエに因んだわけではありませんが)本展の重要な要素となっているのが「光」です。透過/反射/自発光。今回参加するアーティスト/作品は、皆何かしら光を扱っています。谷崎潤一郎の『陰翳礼賛』はその原点と言えますが、時代が変わっても、光がアートや建築にとって共通の関心事であることに変わりはないようです。
まず、国谷隆志の近年のネオンの作品は、空間を光で染色する試みと理解することが可能です。また、ロンドンやベルリンをベースに活動する Kai Yoda と Virgile Ittah によるユニットITTAH YODA は、光に感化して色がゆっくりと変化し続ける特殊なピグメントを使うなど、独特な方法でアフォーダンスのずらし4 4 4を見せてくれます。そして木村太陽の「引き出しの猫」は、「光があるところでは、世界の本当の状態は観測できない」とした、量子物理学の有名な思考実験「シュレディンガーの猫」を思い起こさせるユーモラスな作品です。加納俊輔/上田良/迫鉄平の3 人によるユニット THE COPYTRAVELERS は、散逸しているファウンドフォトや印刷物を、無作為にかつ繰り返しカラーコピーします。消滅した主体と、極限まで断片化された世界。彼らの作品からは「オブジェクトの位相だけがあり、絶対的な空間は存在しないのでは?」という、世界の実相への新たな問いが浮かび上がってくるようです。アートのこのような側面は「オブジェクト指向存在論」(Object-Oriented Ontology)など、哲学の最新の思潮との繋がりをも示唆しています。
ちょっと風変わりで、遊び心がいっぱいの〈ポスト・リビングルーム〉。多様なジャンルの作品と、その間に潜在する予想外の関係性は、観る人の心の中に、不思議な「界隈性」を創り出します。(志賀良和/スプラウト・キュレーション)
会期: 2017年9月22日(金)– 10月1日(日)
会期中無休 11:00–20:00(最終日は17時まで)
会場:渋谷ヒカリエ8階 8/ CUBE 1,2,3
出品作家:
ITTA YODA
亀田克佳(Katsuyoshi Kameda)
木村太陽(Taiyo Kimura)
国谷隆志(Takashi Kunitani)
THE COPY TRAVELERS
元木大輔(Daisuke Motogi)
開催協力:小山登美夫氏
Sprout curation is pleased to present ‘Post Living room’, a group show at Hikarie 8 /CUBE 1, 2, 3 which freely explores the boundary between art, architecture and the interior.
Virgile Ittah and Kai Yoda 's unit ITTAH YODA, based in London and Berlin, is open to the public for the first time in Japan.
Also, the exhibition includes Kansai based artists whose works are rarely seen in Tokyo. New works by THE COPY TRAVELERS, Shunsuke Kano,Yaya Ueda, Teppei Sako, and beautiful neon works by Takashi Kunitani are a must-see.
Furthermore, the 18-gold plated single pipes by young architect Daisuke Motogi, Assanburāju to call alternative antique by Kameda Katsuyoshi, and a cat with a humorous withdrawal by Kimura Taiyo, these works make you feel the fun of “deconstructing”, suspending the functions of furniture and tools temporally.
22 Sep – 1 Oct
11:00–20:00(Last day until 17:00)
Shibuya Hikarie 8th floor 8/ CUBE 1,2,3
Artists:
ITTAH YODA
Katsuyoshi Kameda
Taiyo Kimura
Takashi Kunitani
THE COPY TRAVELERS
Daisuke Motogi
cooperation of Tomio Koyama